プロジェクト事例 PROJECTS
日産自動車株式会社 総合研究所「新価値創造のための『OPEN型』人材・組織開発プログラム」

「新価値創造のための「OPEN型」人材・組織開発プログラム」
VUCA時代において新価値を創造するために、共創できる人・チームの行動変容環境を作り出す

概要

プロジェクト期間
2020年12月 - 2021年2月
課題・背景
新価値創造のために必要な人とチーム行動の変化・進化とは?またその行動変容環境づくりとは?
支援内容
組織開発
体制

プロデューサー:最上 元樹(フューチャーセッションズ)
EQトレーナー:池照 佳代((株)アイズプラス)

ストーリー

大事なのは今までの関係とは異なる、連携をしながら仕事をするスタイル

―― 総合研究所の実験試作部とはどのような部門ですか

田山: 総合研究所は、「日産自動車で商品に結びつけるための技術開発を行う部門」です。総合研究所には、色々な研究がありますが、「横串で研究を進めるために様々な実験や試作をして、物やデータでの実証をするチームが実験試作部」です。

―― なぜこのプログラムを実践されたのですか

大和田: 研究開発の現場のモノやコトのスケールが大きくなっています。例えば、社会実証実験を担うことも始まりました。また、車も色々なシステムが統合されて動く時代になってきています。 これらは、とても一人のエキスパートだけで作れるものではなくなっています。つまり、「今までの関係とは異なる連携をしながら仕事をするスタイルが不可欠になってきている」というのが、実践の背景です。

―― どのようなことを研究されているのでしょうか。

田山: モビリティサービスのチャレンジとして、福島県の浪江で実証実験を開始しています。 自動運転車両も使うし、EVを使ってモビリティサービスもやります。

知花: 最近ニュースで見ました。日産リーフは蓄電池として車自体が成り立っている。車の使われ方もただ乗るだけではなくなっていることに驚きました。

大和田: 災害時の非常用電源として色々な自治体と連携して、何か起これば車を持って行って緊急用バッテリーとして使うこともしていますね。

―― 研究の促進に最重要と捉えていることはなんでしょうか

大和田: 1つは、かっこよく言えばダイバーシティ。お互いに背景を理解しながらコミュニケーションを取らないと、上手く回らなかったり変な軋轢が生まれたりする。また我々日産という組織の中だけで物を作るわけではないし、地方自治体や企業とコラボレーションをするので、色々なバックグラウンドを持った人たちと連携しながら前向きに仕事をするスタイルが確実に求められています。

―― これから大事になってくるEQ(感情知性)素養は何でしょうか

大和田: エンジニアの多い組織なので、地方自治体や地域市民の方々と話をすると、捉え方や価値観の違いによって世界観が大きく変わってくると思います。自分たちとは違った立場の方々と協働する時には、OPENの”N”、『ナラティヴ』を意識して、できるだけ背景やストーリーを意識しながら、伝えることや共有することが大事になってきていると思います。

    • EQとは、Emotional Intelligence Quotientの通称で感情知性のことを指します。1990年に米国の2人の心理学者によって論文として発表された理論で、「自己の感情や思考をマネジメントするとともに他人や周囲の感情を適切に理解し働きかける能力」と定義しています。
    • OPENとは:行動変容環境を作り出すための中心的なコンセプトです。人材、チームそれぞれに紐づいています。
      • 人材・チーム共通するEQ4要素
        • Ownership(主体性)/Pliability(柔軟性)/Empathy(共感力)/Narrative(世界観共有)
      • OPENな人材定義(一部紹介):
        • 「相手の立場や文脈を理解したコミュニケーション」ができる
        • 「感情と行動のマネジメント」ができる
      • OPENなチーム定義(一部紹介):
        • 自身の狭義の役割を超えて、「チームメンバーへの貢献」ができる。また、自チームの役割を超えて、「他チームの価値創造への貢献」ができる
        • 現状を多面的な情報から客観的に理解し、継続的に改善することができる

知花:  組織の内部では、いかがですか。

大和田: 今回、グループメンバーが対話する姿を見てきて、フォーマルな場なのにも関わらず自然体で話をしている事や、心からやりたいと思える事が引き出せていることに非常に驚きました。表情も豊かで、柔らかいというか…意欲に満ちていて、形式張らないというか。社内の会議や1on1では、”この発言したらどうなるんだろう・・”と探っている感じも伝わってくるし、硬さもある。
3回目の最終セッションでは、一人一人がチーム全体を考えるような発言も多かった。今回は一部のメンバーのみの参加でしたが、部や課の中全体としても時間をかけてこういう状態になるように支援しないといけない。

田山: その点は、これまで意識してやらせてなかった。私は若い時に上司に仕掛けられて、「自分たちの魅力をどうアップするか」、「どう人材育成をするか」、「新しい人が来たらどうするか」を考える機会をもらっていました。その頃は、『なんで偉い人は自分で考えないのだろうか』と思っていましたよ。
しかし、こういう立場になってメンバーを見ていると、『組織を考えるのはマネジメント』と言われてしまう。昔の自分を見ているようで、とても悩ましいですね。それを鑑みてリードをしてきましたが、やはりメンバーに考える機会を与えないと彼らが成長した時にチーム全体を考える力が育たなくなってしまうと思っています。

池照: 皆さんの調査結果から、『私的自己意識』という「自分が意見を持っている」というのは、非常に高い。
でも自分から開示する数値はすごく低い。意見は持っていても、自分から開示するという行動に出ていない。私がオブザーバーで入らせて頂いたグループも、お互いがお互いを探りながら、こんなことを言ったら傷つけないか、こんなことを言ったら変に思われないか、ちょっとぎこちなく自己開示しているのがすごく印象的でした。

田山: 確かに。良いか悪いかは別として、大きな組織では異端児のような存在も出てくる。何百人も集まっているこういう時間にそういうことをやるか、ということを平然とやったり。それを見て、「自分はやらないでおこう」と思う人も多い。
これに対して、何が良いかではなく、大事なのは他人の評価や上司の目を気にして表現を遮ってしまっていることだと思う。

―― どうしたら、OPENに近づけるでしょうか

池照: 素の人間としての自分を表現をすることを、大人になってからチャレンジするのは難しい。キャリア教育をやっていますが、社会人プログラムで皆さんが一番苦労するのは、 10歳の子どもに自分の仕事の説明をすること。なんとか実験など、難しいことを言っても子どもはわからない。10歳の子供にわかる表現で自分が1日8時間使っていることを説明することを考えてきてくださいと言うと、夜眠れなくなる社会人が多い。

田山: 今は言えるようになったが、最初子どもに言われた時はウっとなりましたね。子どもに、車を作っていると言ったら当たり前じゃないか、と言われたし、車のどの部分とか、組織の役割を言うと 頭がショートしていましたね。
自己を表現することについて、私たちの場合は仕事の範囲の広さと経験値の長さが影響していると思います。私たちは業務範囲が広く、そんなに一箇所の経験値が長くない傾向があるので、万事屋と表現する人もいますね。

知花: 何が好きなのか、何が得意なのか、次の5年で何を得意にしていきたいか、などを、1on1で話せるといいですね。

大和田: そうですね。主体性という意味で、自分のありたい姿を話しながらそれをサポートすることが大切と思います。今回のセッションの中で「職場の中で困っている人が居たら自分の裁量で手伝いに行きたい」という声も聞こえてきて、そのような小さな行動から新たな自分に気づいていく場を作っていきたいですね。

池照: 今日もグループであったが、「個人的なことをあえて話して良いんだ」という個人の前提や、「私が困っていること」、「私がやりたいこと」を話せることはすごく重要だと思った。
EQワークでは、何かを決める時、何かをする時に、チームの柔軟性を高めるのに『プラス1』というのをよくやる。本来は、このメンバーで決める会議だが、プラス1で〇〇さんを呼んでみようというやり方。柔軟性を高めて、オープンマインドで対話しながら、組織の関係性を構築していけるといいと思います。

―― 今後の展望についてお聞かせください

大和田:  社会実証実験などは特にそうですが、自分で領域を狭くつくってしまうと発想の広がりも気づきを得る時間も無くなってきます。それを外して感度を上げることをやっていきたいですね。以前は、エンジン設計、車体設計やモノづくりの人は分かれていた方が効率が良かった。
でも、モノだけでなくサービスを考える世界になってくると、気の利いたことを考えられる人が大事になってきます。それを実現する手段は、マーケティング調査だけでなく、実験現場の方が持っている可能性もあります。組織の中でも現場と技術が分かれるのでなく、全てが連携してユーザーの価値の最大化のために仕事をやっていきたいです。
その気持ちを持って、もっとアクティブにやっていける部隊で、お互いの切磋琢磨を楽しみたいです。ビジョンで表現している「楽しく仕事をする」へ向けて、変化や新しいことにチャレンジしていきたいです。

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