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コネクトチーム
鎌倉市「スマートシティ市民対話」

「スマートシティ市民対話」
日常の困りごとや問題を共有し、理想とする未来の暮らし方について対話する

概要

プロジェクト期間
2020年11月 - 2021年3月
課題・背景
多様な市民の声を市政に取り入れるには?
支援内容
市民協働、市民対話
体制

プロデューサー:筧 大日朗(フューチャーセッションズ)
ディレクター:有福 英幸(フューチャーセッションズ)

日常の困りごとや問題を共有し、理想とする未来の暮らし方について対話する

鎌倉市では、誰もが生涯にわたって、自分らしく安心して暮らせる共生社会を目指して、生活に身近な社会課題をテクノロジーで解決していく「スマートシティ」を推進していこうと考えています。そこで主体となる市民の方々が、現状何に困っているのか、将来どのような暮らし方を望んでいるのかを理解するために、市民に開かれた対話の場を開催しました。
コロナ禍で、対面での対話が難しい中、オンラインでの取り組みについて伺いました。

 

 

中山 秀樹(なかやま ひでき)※写真左
鎌倉市共生共創部政策創造課 政策創造担当 担当係長
M&Aや株式などの金融市場のデータを分析し、新たなビジネス創出をサポートする民間企業での経験を経て、2009年に鎌倉市役所に入庁。子育て家庭への支援業務に従事したのち、2016年から現在の政策創造課に所属。主に、庁内の様々なセクションと連携し、企業や大学、市民など様々なステークホルダーとの共創プロジェクトを推進している。

 

本多広幸(ほんだ ひろゆき)※写真左から2人目
鎌倉市共生共創部政策創造課 政策創造担当
2015年に鎌倉市へ入庁。高齢者支援に従事した後、東京大学高齢社会総合研究機構に出向し、高齢社会のまちづくりを実際の現場で学んだ。その後、2019年から政策創造課で未来を見据えた庁内横断・中長期的課題の解決を探る調査研究活動を行い、主に長寿社会のまちづくりや、産官学民連携の取組である鎌倉リビングラボを推進している。

 

勝 勇樹(かつ ゆうき)※写真左から3人目
鎌倉市共生共創部政策創造課 課長補佐
入庁後、高齢者福祉、観光(海水浴場運営など)、ふるさと寄附金(納税)などの複数の職場で培った現場感覚を活かし、2019年から政策創造課にてスマートシティの推進に向けた業務に従事。モットはー、「考えるより、まず動いてみる」。

 

佐藤拓磨(さとう たくま)※写真右
鎌倉市共生共創部政策創造課 スマートシティ担当
学生時代に都市計画研究室に所属し、住民参加型ワークショップの運営などを通して、まちづくりの現場に積極的に関わってきたことから行政職員を志し、2014年に建築職として入庁。営繕、許認可業務に従事したのち、2019年から政策創造課スマートシティ担当として所属。令和3年度はスマートシティ構想策定業務を推進している。

ストーリー

鎌倉市初のオンラインによる市民対話を開催

―― なぜスマートシティ市民対話を開催しようと思われたのでしょうか。

中山)鎌倉市としてスマートシティの取組を進めるにあたって行政だけでなく、住民の皆さんや企業の皆さんなど、産官学民の多様なステークホルダーと考えていくことが大事だと思っていましたので、はじめから一緒に考えていきたく、まずは市民対話をやろうとなりました。

佐藤)スマートシティの担当になってから、これまで市民との接点があまり持てていませんでした。頭でいろいろ考えている中で、市民のニーズがないと成立しないけれども、ニーズを掴みきれていないな、というジレンマを感じていました。

本多)鎌倉市の政策創造課は、市民の声を聞くことを重要視している課でもあるため、どうすれば市民の声をしっかり聞けるか、ずっと考えていました。
「ともに考え、ともに創る」という共創は、鎌倉市基本計画の三本柱の大きな一つになっています。市民の方々との対話を大切にしていたので、今回も大事にしたいという想いがありました。

―― コロナ禍でリアルでの開催が難しい中、鎌倉市では初のオンラインによる市民対話だとお聞きしています。開催までにどのような困難がありましたか。

中山)そもそも、オンラインで市民対話をやってくれるという事業者がいなかったことです。いろいろ探しましたが、やったことがないと言われてしまいました。今回のオンライン市民対話のメイン担当者としては、成功させないといけないというプレッシャーでやっていました。オンライン開催が初めてだったので、今後もオンライン対話を継続するのかどうかについて一つの判断基準になるとも思っていました。

勝)市役所としては他の課を見回してみても初めての挑戦でしたので、保守的な仕事に走りがちな市役所にとって、とてもチャレンジングな仕事になりました。ただ安心していたのは、フューチャーセッションズには細かな機微を伝える必要がなかったことです。目指すべき状態が共有できていたため、ほぼ阿吽の呼吸で進められて安心感があったし、収穫もありました。

中山)政策創造課はいろいろ挑戦してみようよという風土のある課なので、周りのメンバーも協力的でした。

勝)市役所内で関連する課の人だけでなく、関連しない課の人もオンラインでの市民対話をどうやるのかについて関心を持ってくれていました。そのため積極的に参加してくれたりするなど、市役所内でも新しいつながりが生まれました。


中山)一方で、オンラインによる市民対話で本当に市民の声を聞けるのか。一部の人だけの参加になるのではないのか、という声もありました。そのため、いろいろな層から声を聞けるように、福祉事業所や子育て世代、若い人や高齢者の人など多世代、多様な方々に声をかけていきました。また、LINEやFacebook、TwitterなどSNSを活用して声をかけました。他にも小中学校、街中の感度が高いところ、多くのNPO団体など、いろんなところにもチラシを配りました。みんなが少なくとも1回は目にするだろうという媒体に、満遍なく声をかけたと思います。
そして、より多くの方々にご参加いただきたかったので、大体の方が参加できるであろう日時を考え、平日の夜と休日の午前と午後の合計3回開催しました。

本多)口コミにも力を入れました。市役所職員の知り合いにも直接連絡をし、高校生グループが参加してくれたことにつながっています。

オンライン市民対話の成功

―― 実際にオンラインでの市民対話に取り組まれてみていかがでしたか。

佐藤)オンラインでやると市民同士で対面しながらやっているという感覚が良い方に出やすいためか、前向きな対話ができた気がしました。
例えば、Zoomによるブレイクアウトルームに分かれた後、少人数の対話だからこそ丁寧に様子をみながら対応でき、「あなたの困りごとだけでなく、周りで困っている人はいませんか?」と質問を変えていったら、目つきも変わってくれて「こんなことがあってね」と話すようになってくれました。本当に膝を突き合わせて話せるようになったという感覚を得られました。

中山)オンライン市民対話の良さは、普段参加できない層が参加できるようになったことだと思っています。夫婦で参加してくれた方、小さなお子さんと一緒に参加してくれた方、場所の制約もなくなっていたので外出先の他県から参加してくれた方もいました。

佐藤)参加者のバリエーションは確実に増え、新しい人たちを招き入れることができました。ただ、参加したくてもできないという人は一定数いて、そこはフォローが必要だと思っています。

中山)スマートシティというテーマ自体が、オンライン市民対話と相性がよかったということもあると思います。

勝)スマートシティは言葉が先行しがちなものだと思っています。言葉を理解してもらうことが大事なのか、未来に起こることを理解してもらうことが大事なのかで悩んでいました。市民対話で人口減少の話や、目の前に起きている課題について話すと、スマートシティという言葉の意味以上に、これからの未来社会に対してどんな風に歩む必要があるのかについて、スマートシティは希望となり得ると初めて市民の方に知ってもらえたことが非常に価値のある場だったと思っています。

―― 成果については、どのようにとらえていらっしゃいますか。

勝)子育て世代の方から、オンラインなので容易に参加できたと言ってもらえオンライン市民対話の良さを市民から評価されました。

中山)新しい動きとして成果を示せることができたと思います。コロナウイルス感染症で市民と会えないけど事業を進めないといけないという市役所内の課も多いため、オンライン市民対話をどうやるのかなど相談も多くなりました。今回のオンライン市民対話の動画もできたので、今後はこれも活用しながら、ここまでできるよと発信できるのではないかと思っています。

佐藤)オンライン市民対話の運営についても自信が持てました。オンライン市民対話は、テレビの生放送を回しているようなものだと感じており、緻密な設計や役割分担、裏でコミュニケーションツールを活用して対応することに気を使っていました。誰かが動ける体制を常時作っておくこともしました。そうすることで、職員のメンタルに余裕が生まれ、市民との対話に集中できます。

みんなで共創した対話の場

――「フューチャーセッションズはどのように貢献できていましたか。

中山)オンライン市民対話が初めてだったので、事前に相談したときに、「オンライン対話は実践経験もあり、大丈夫ですよ」と意に介さない感じであったのでとても安心できました。
参加者アンケートでも、ファシリテーターの進行が滑らかで良かったという声もあり、安心して任せられました。運営を気にせず対話に集中して進められたのは良かったです。また、裏側での運営もしっかりと支援してもらえました。裏側のブレイクアウトルーム分けが意外と大変だといったことも、今別の機会に自分たちがやってみて初めて理解できました。

本多)フューチャーセッションズのように間に立ってくれる役割は、大きな効果があると思いました。行政と市民が向き合ってしまうと、批判の的になることもあるのですが、間に第三者がいることで、ここは批判の場ではないという状態や理解が生まれました。余裕を生んでくれて、中立的な立場を貫いてくれたのが大きかったです。

佐藤)問いの設計が絶妙だったと思います。市役所職員だけだと、枠にはめようとどうしても考えがちになります。会話の一つのような雰囲気で問いかけていて、こんな風に自然に思いを引き出せるのかと勉強になりました。

中山)課内でも問いが大事と言っていますが、実際はなかなか難しいです。「こんなスマートシティは嫌だ」など、遊びのように楽しく対話できるような問いづくりはさすがだなと思いました。職員だけだと狭い範囲で考えてしまい、「あなたにとっての課題はなんですか?」というストレートな問いくらいしか考えられなかったのではないかと思います。

今後の市民対話の可能性

―― 今後の市民対話では、オンラインとリアルをどう使い分けると良いと感じていますか。

佐藤)理想は両方を使い分けることだと思っています。オンラインはすごくメリットがあると感じる一方、デジタルに不安がある人がいるのも事実で、改めて深刻な問題だと捉えています。オンラインは有力な選択肢であり、いろいろな幅の人を連れてきてくれますが、リアル対面を求めている人たちもいると感じています。

本多)デジタルデバイドの問題だけでなく、リアルでの対面効果も感じています。最初はオンラインで良いけど、市民同士のコラボレーションを先に進めるためには、リアルでの対面が必要な状況もあると感じています。ハイブリッドでイベントの趣旨に合わせて対応していくのが理想だと思います。

佐藤)リアル対話には良い波及効果があると思いますが、喋りすぎたり、雰囲気を一人が作りすぎてしまう側面もあります。オンライン対話だと一人一人順番に喋る感覚が出やすく、一人の意見に引っ張られる状態が起きにくかったのではないかと思います。

本多)リアル対面でワークショップをすると、参加者の年齢層も多様で、KJ法などの手法に得意・不得意が出やすく感じます。オンライン対話だと設計にもよると思いますが、フラットな感覚が強くなったと思います。

佐藤)自分の部屋からZoomにつないでいる人も多いためか、リラックスした雰囲気も出ていて喋りやすかったようです。市役所の施設だとあまり楽しい雰囲気になりづらいところもあり、出てきた声は変わったように思います。

中山)オンラインで市民対話ができるのは新しいし、オンラインの対話の場があること自体がスマートシティですね、という市民の声もありました。

佐藤)オンライン対話だと声の大きさが関係なくなるというのがすごく良いと思いました。声が大きくなる傾向がある人もいれば、逆に声が小さい人もいるけれども、マイクを通すと声の音量が均等に聞こえやすくなりました。オンラインでは発言機会も確保しやすく、小学生の意見も普通に聞き出せて良かったです。

中山)最初は全然わからなく、最後に9歳の方が参加しているとわかり、こちらもびっくりしました。(笑)

―― 今後どのようなチャレンジをしていきたいですか。

本多)オンライン市民対話は、オンラインやスマートシティに肯定的な人が中心になりやすいのではないかと思っています。リアル対面での市民対話を開催すると、スマートシティへの反対層も参加するのではないかと感じています。オンライン市民対話でも、スマートシティを不安に思っている人や反対意見の人も参加できるよう、次に向けて改善したいです。

勝)スーパーシティの説明会を2021年3月中旬に開催し、市民が参加できる会を増やしてほしいという声もいくつかもらいました。スマートシティが市民の生活に実装されることが本当のゴールであり、オンライン市民対話だけでは済まない部分も出てきますので、市民と一緒にリアルに膝を突き合わせて創り上げていくことも必要だと思っています。コロナウイルス感染症のワクチンも普及すれば、ビジョンだけでなく、実装に向けた活動も本格的にできるようになると思っています。

佐藤)主体的に市民に参加してもらえるようにしたいです。共働きの方もいれば、足の悪い方もいて、そういう人たちにとってオンラインは有効なツールであり続けると思います。オンライン参加が難しい人を支援するサテライト会場も用意できると、なかなか出会わない人が出会う機会を創出できるのではないかと思っており、こういった機会の提供も行政の役割だと感じています。スマートシティ実現をぐいぐい推進するというよりは、多様な人が参加できる場をつくるというのが行政の大きな役割ではないかと思っています。

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