プロジェクト事例 PROJECTS
コネクトチーム
藤崎町「未来志向の地域デザインプロジェクト」

「未来志向の地域デザインプロジェクト」
共創型プロジェクト構築を軸に、町民主体でまちづくりへ挑戦

概要

プロジェクト期間
2019年9月 - (継続中)
課題・背景
若者の流出や人口減少などの課題を町民主体で解決するには?
支援内容
事業開発、地域開発
体制

ファシリテーター:相内 洋輔(フューチャーセッションズ)
プロデューサー:最上 元樹(フューチャーセッションズ)
プロジェクトリーダー:佐藤 一敏(藤崎町)

「未来志向の地域デザインプロジェクト」で町民の主体的参加の土壌を作る

青森県藤崎町は若者の流出や人口減少などの課題に直面している地域です。これまでも地域コミュニティは活動してきたものの、全町のまちづくりに関しては行政が主導するものという認識が町民には根強くありました。
そこで、藤崎町とフューチャーセッションズは共創型のプロジェクトを構築しながら、町民の主体的参加の土壌を耕す「未来志向の地域デザインプロジェクト」を始動。その様子をお届けします。

藤崎町 経営戦略課 戦略推進係
佐藤 一敏さん:事務局+参加者(2019年度)、黒崎 遥佳さん:事務局+参加者(2019年度)、福士 真子さん:参加者(2019年度)

ストーリー

「未来志向の地域デザインプロジェクト」で目指す藤崎町の姿

藤崎町はどのような町でしょうか。

黒崎 水と緑の豊かな自然に囲まれた農業の町です。青森市、弘前市、五所川原市という青森県の主要な3つの都市の中央部に位置しており、とても住みやすい町です。

福士 お年寄りが元気な町でもありますね。町に高校と大学がないので、弘前市や黒石市の高校へ進学し、電車で通学するようになります。結果的に、地域に若者が少なくなるという寂しさはあります。

 

佐藤 逆にいうと、各市部へのアクセスが良いので、通勤通学の拠点として藤崎町に居を構えていただくことも多いようで、近年は人口が社会増となる傾向も見えています。

特に弘前市を中心とした圏域の中では、青森市へのアクセスが最も良く、JR北常盤駅を利用することで、弘前市はもちろん青森市の学校や企業へ通うこともできます。
これからはそういった点をアピールしながら、移住希望の方に選んでいただけるようにしたいですね。

−所属されている経営戦略課 戦略推進係は、町役場の中でどのようなことに従事されている部門ですか。

黒崎 私たちが所属する経営戦略課の戦略推進係は、主にまちづくりを担当しています。地域活性のための企画を考えて、その実行を担います。

佐藤 地方創生の動きをふまえながらの仕事になります。

福士 加えて、町全体の様々な事業のとりまとめをしています。チーム内では頻繁にやりたいことについて意見を出し合っています。自由度の高い課ですよね。

−「未来志向の地域デザインプロジェクト」が目指している未来の藤崎町の姿を教えてください。

黒崎 このプロジェクトは、参加したメンバーが共創型の対話の場(セッション)を開催できるようになること、そこから組織を超えたコミュニティと企画が生まれること、そしてその企画の実行により町が活性化することを目指しています。
構築されるコミュニティを一言で表現すると「プロを目指す 大人の部活動」のようなイメージです。藤崎町の「こんな未来、こんな地域をつくりたい」ということを実現するために、みんなで楽しみながら考えて行動しています。ポイントは、主体的に活動し続けるために、とにかく楽しいプロジェクトにすること。そして、やるからにはできる限り良い結果を生み出すことです。私自身も、自分が楽しいと思うことしかしたくないですし、参加者の皆さんが楽しみながら自身のチャレンジや地域の活動に取り組める環境を作りたいと思っています。

福士 「チャレンジ精神」も大切にしたいキーワードですね。行政主導ではなく、「自分たちで自分たちの問題を解決できるんだ」ということを実感してほしいと思っています。そして、それこそが町の魅力であると考えていきたいです。

佐藤 ちなみに蛇足ですが、私は当事業について「もつけ仲間とチャレンジを楽しむ町」をビジョナリーワードとして掲げていました。「もつけ」とは、津軽弁でお調子者や積極的な人という意味ですね。

−「未来志向の地域デザインプロジェクト」の必要性を感じた理由について教えてください。

佐藤 町の人たちが、積極的に「地域をよくしていこう」と行動できるような“チャレンジできる環境”を作りたいと思いました。みんながチャレンジできるようになったら、この町はもっとよくなるだろうと考えたんです。
先ほどお伝えした通り、藤崎町は若い人が流出しており、人口減少の傾向にあります。何年後かに、高齢化により農家が廃業してしまえば町の税収も少なくなり、自治体の存続すら危ぶまれます。これは、藤崎町だけではなく、多くの地方に共通する問題ですよね。
これまで、住民を増やすことやお祭りを開催すること、道の駅のような場所を作ることといった行政主体でできるまちおこしには取り組んできましたが、それだけでは限界を感じていました。「行政主体による政策」と「町民主体の経済活性化のアクション」を別々で捉えるのではなく、両輪で行われるからこそ、地域におもしろいといわれる価値が作られていくと思っています。
そういったことから、町民の方達が経済を活性化するためのアクションを積極的におこして実行できる環境を作りたいと思ったのです。

福士 町民の方々がどのように経済活性化アクションを起こしていくと良いのかについてですが、藤崎町は農業に従事されている方が多いです。農家さんはほとんどが個人事業主で、みんなで何かに取り組むという社会共創の考えを少し持ちにくい状況にあります。なので、まちづくりは「行政がやるものでしょ」と考える風潮もあります。これまで町民の方にお越しいただいてまちづくりのワークショップを行ったとしても、アイディアを出すだけて終わってしまい、そこから共創して実行することは少なかったように思います。
このプロジェクトでは、これまで町内会で考えてきた地域での活動やその運営についてだけではなく、主体的にコミュニティを作れること、そこで共創しながら地域に新たな価値を生み出せることを知っていただきたいと考えました。

黒崎 ただ、これまでも地域のコミュニティが全くなかったわけではありません。民間のコミュニティが主催している、各団体が多様な鍋料理を出店し、最もおいしい一品を競う「なべワン-グランプリ」やアマチュアの方が参加する音楽イベント通称「フジフェス!」などもありますね。

福士 主体的にコミュニティに関わろうとする方々に、これまで以上におもしろいコミュニティの作り方や運営方法を知っていただけたら、一層地域が活性化するのではないかなと思っています。

共創ファシリテーターの育成と立ち上がった3つのプロジェクト

−「未来志向の地域デザインプロジェクト」の参加者について教えてください。

黒崎 参加者の募集は、インターネットでの告知と広報誌に挟んだチラシを町内全戸に配布しました。どのような人が、どれくらい集まってくださるのか不安でしたが、キックオフのセッションには、約30名の方に参加していただくことができました。最終的には、「平日の昼間に開催するために時間が合わない」といった理由をお持ちの方を除き、目標としていた20人程が集まったので胸をなでおろしたんです。
なかには、藤崎町出身で、現在仙台市にお住いの方も参加してくださいました。まめに藤崎町のことをチェックしてくださっていて、「いずれ地域に関わる何かをしたい」と思っていらしたそうです。そうした思いを持って参加してくださったことは本当に嬉しかったですね。

 

−「未来志向の地域デザインプロジェクト」を行うにあたり、期待していたことはどんなことですか。

佐藤 フューチャーセッションズさんには、共創型で事業創出のプロジェクトを推進していける人を増やすための「事務局」をサポートしてほしいとお伝えしました。もちろん、起業家や事業家を増やす活動も必要なことです。しかし、地域全体として事業創出プロジェクトの推進力を高めるには、様々な方が参画できる共創型のプロジェクトが増えることが重要です。さらに、そこに参画する方々が増えることで経験値やネットワークが蓄積され、長期的に地域の力が高まる仕組みになると考えていました。そのため、フューチャーセッションズさんには住民主体の持続的な活動のベース作りを一緒に担ってほしかったのです。事務局が育てば、いくつものプロジェクトを副次的に走らせることができますからね。

福士 結果的に、フューチャーセッションズさんにお願いできたことで参加者の一体感が生まれ、終始プロジェクトの雰囲気がとてもよかったです。私は、2019年度は事務局側ではなく、メンバーとして参加していたのですが、フューチャーセッションズさんはいつも意見の拾い方や伝え方に長けたファシリテーションをしてくださり、心強かったですね。

黒崎 わからないことだらけの私たちが何を聞いても、とても丁寧に答えてくださったので安心感がありました。結果的に、自走するところまでを常に見越して寄り添ってくださっているように感じています。

−2019年に実施された「未来志向の地域デザインプロジェクト」の内容を教えてください。

黒崎 2019年度は、イノベーションを起こすためのファシリテーション講座を開講し、参加者を「共創ファシリテーター」に育てる活動をしました。
共創でイノベーションを起こしていくことを学んでから、参加者一人ひとりに「藤崎町で何をしていきたいか」のプロジェクト構想を考えて、発表してもらいました。15個の構想の中から、最終的に3つのプロジェクトが立ち上がり、2020年度から事業化に向けて具体的に共創型でイノベーションを起こしていく活動が動き出すこととなっています。

最終的に立ち上がった3つのプロジェクト

  • 藤崎町の農作物を使ったフレーバーシロップの開発
  • 藤崎町をフィールドにした謎解きイベント開催
  • 農地を活用したアウトドア体験の提供

福士 振り返ってみると、「ファシリテーターって何?」「カタカナが多くないですか?」というところからのスタートでした。そこから、共創型のファシリテーターを育成していくのです。エキサイティングなのはいうまでもありません。
講座の中で学びましたが、共創型のファシリテーションは、問題解決型のファシリテーションとは少し異なります。問題解決型のファシリテーションは、目の前の解決すべき問題が明確ですが、共創型のファシリテーションは、作りたい未来と共に達成したい課題を作るところからスタートしなくてはなりません。そのため、参加者が主体的に「これがやりたい」と意欲が湧くまでサポートすることが求められます。
講座では、具体的なファシリテーションの方法として「こういう手法を使うことで、こんな場づくりができる」ということを学びました。学んだ手法を実際に活用することで、自分の中で共創型のファシリテーターとしての意識が根付いていったように思います。

黒崎 共創型のファシリテーションを実践することで、巻き込める人の輪が広がりオープンなプロジェクトにしていくことができると実感しています。これは、長期的な視点で見た時に、町の総合力を上げることにつながると考えています。

地域に主体的に関わる変化が芽吹く

―取り組みの手応えを教えてください。

黒崎 プロジェクトが始まってすぐの頃に、参加者の方に「想像していたものと違った。みんなでワークショップをして、アイデアを出して終わっていくんだと思っていた。でも、このプロジェクトは共創の仕方やワークショップのやり方、アイデアの出し方を学んでいくので、アイデア出しの場ではなくて本当に事業作りをしていくんだね」と言われました。ファシリテーション講座では、回を重ねるごとに、「参加者の方々が、本当に実行していくんだ」という雰囲気になり、皆さんがどんどん主体的になっていきました。これまで、ワークショップイベントをしても、受け身の方が多い印象でしたが、今回は自分やメンバー一人ひとりが主役なのだと思ってくださったのだと感じます。地域へ関わる意識が大きく変わったのではないでしょうか。

福士 「未来志向の地域デザインプロジェクト」の内容とは少し離れますが、最近、町民の方の変化を実感する出来事がありました。現在の新型コロナウイルス感染症の流行という状況の中で参加者の方が「この時期だからこそ、私たちで何かできないだろうか」と声をあげてくださったのです。そこで、「みんなで何ができるかを話してみよう」と、夜な夜な会議をしました。主体的に町に関わろうとする人々が増えたのだと手応えを感じています。

黒崎 当初目標としていた、みんなで楽しみながら地域に主体的に関わるという意識が芽生えているのではないかと感じています。町民のこのような姿勢が、町の事業を確実に広げていくと感じています。

福士 ほかにも、事業を起こす活動だけでなく、役場内の集まりでも、共創型のファシリテーターによるセッションで、アイデア出しや意見交換をする機会が増えました。私たちも経験を積みながら、共創型ファシリテーションの考え方を浸透させていきたいと考えています。

−次のステージに向けて歩み出していることや、これから実現したいことを教えてください。

黒崎 2020年は5月以降に、「未来志向の地域デザインプロジェクト」で出された3つのプロジェクトのオーナーと参加者でチームを作る「キックオフセッション」を行います。各プロジェクトは、そこからが本格的に始動する予定です。
実は、私も1つのプロジェクトのリーダーをします。「ちょっと大人のおいしい藤崎プロジェクト」という藤崎町の農作物を使ったフレーバーシロップの開発をし、町をPRするプロジェクトです。

今年度で3つのプロジェクトを事業化するという経験を積んでから、次のステージにのぼっていくことになりますが、最終的には「チャレンジ精神を持って活動できる」「町民が主体となる」土壌を作るという目標を実現したいです。

福士 「未来志向の地域デザインプロジェクト」のFacebookの投稿や記事を見て、「楽しそうなことをしているね!」と声をかけてもらえることが増えました。そういうふうに思ってくださる方が、次の参加者になってくださるのだと思います。今回の3つのプロジェクトは全国から参加可能です。藤崎町に主体的に関わる方が増え、共創の輪を広げていきたいと考えています。

プロジェクト参加メンバー PROJECT MEMBER

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