プロジェクト事例 PROJECTS
藤崎町「ふじさき地域デザインLABO」

共創プロジェクトで2つのプロジェクトが実装! 地域を 遊ぶ 「 謎解き」と 「 あそべるりんごえん」 を展開

概要

プロジェクト期間
2019年~2022年
課題・背景
若者の流出や人口減少などの課題を町民主体で解決していくには?
支援内容
事業開発・地域開発
体制

プロデューサー兼ファシリテーター:最上 元樹(フューチャーセッションズ)
プロジェクトリーダー:佐藤 一敏(藤崎町)

青森県藤崎町は東北地方の他の地域と同様に、人口減少などの社会課題へのアプローチを必要としていました。問題は複雑で、過大であるため、それらをすべて行政だけが担うことは難しい。そこで、2019年から「ふじさき地域デザインLABO」を立ち上げて、共創プロジェクトを推進できる人の育成などを実施。2020年には、3つのプロジェクトが走り、共創プロジェクトを通じたプロトタイピング(実証実験)をスタート(詳細は前回記事を参照)。
その中で、謎解きで地域を知る「ナゾツク」と、リンゴ畑を遊び場として活用する「わんどおらんど」の事業がスタートしました。

今回は、藤崎町役場で勤務し、「ふじさき地域デザインLABO」のプロジェクトリーダー・佐藤一敏さんと、「ナゾツク」オーナーの畳指謙自さん、「わんどおらんど」オーナーの吉田浩祐さんにお話を聞きました。

藤崎町 経営戦略課 戦略推進係
三浦 宏康さん(左)、佐藤 一敏さん(中央)、川田 寛実さん(右)

ナゾツク テーマオーナー
畳指 謙自さん

わんどおらんど テーマオーナー
吉田 浩祐さん

ストーリー

「大人の部活動」の雰囲気を大事に、2つのプロジェクトを実装!

―― 「ふじさき地域デザインLABO」立ち上げの背景を教えてください。

佐藤)私は行政の人間として、町を盛り上げるためにはどのようなことができるかを考えてきました。役所だけで考えていても波及効果に乏しかったり、アクションに繋げられなかったりといった課題があり、町民と「どのような未来を作りたいか」を合意形成し、それに対して実行していきたいという想いを持って、フューチャーセッションズに依頼をしました。
アイデア出しだけで終わってしまうワークショップや話し合いではなく、小さくても自分たちで活動を始められるように、「これをやりたい」と手を挙げてくださる人を募り、「大人の部活動」のような雰囲気で、スタートしたいと考えていたんです。

―― 「ふじさき地域デザインLABO」では、これまでどのような活動を行ってきましたか?

佐藤)長期的に共創コミュニティをつくるために、初年度である2019年は、共創プロジェクトを推進できる人を生み出していくという目的で、多様な関係者と協働でプロジェクトを運営するためのファシリテーション講座を実施しました。講座を経て2020年には、3つのプロジェクトが誕生し、プロジェクトチーム内の議論だけでなく、県内に留まらずに関東圏や関西圏なども含めた様々な地域や人と共創しながら事業案を創作してプロトタイピング(実証実験)を実施。私はプログラム上、事務局という位置付けでしたが、自分自身も地域住民の一人ですので、地域を盛り上げるために参加者として各チームの中に入って活動していました。3つのプロジェクトとも、プロトタイピングを行い、実装可能性を探索した後に、2022年からは、そのうちの2つ「ナゾツク」と「わんどおらんど」が継続して実装していくことになりました。

―― 2つのプロジェクトが実装していく中で、手応えややってきてよかったと思った瞬間はありましたか?

佐藤)プロジェクトの立ち上げと同時期に、新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、コロナ禍となってしまったので、企画した集客を実行しきれずに、事業としては思ったほどインパクトは出せませんでした。それでも、ナゾツクチームは、三密を回避しながら地域の魅力を遊んで学べる「ナゾツク」という謎解きゲームをリリースして、「謎解き、おもしろかった!謎に出てきた物を食べてみたい!」と一般参加者から頂いた感想を目にした時は嬉しかったですね。「わんどおらんど」でも、未知なるテーマである「あそべるりんごえん」を体験できるイベントとして提供した際に、子どもたちが遊びにきて、「走っていい?」と保護者に確認した後に、思いっきり走り回っている姿を見て、「今までにない、りんごえんで遊んでいる子どもがいる。やってよかった」と感じました。
私は、「藤崎町を知ってほしい」「好きになってほしい」といった想いで取り組んでいるので、良さを知ってもらい楽しんでいる姿を目の当たりにすることで、次もまた頑張ろうと思うことができました。

―― 一方で、大変だったことはありますか?

佐藤)こういった有志に近い活動を継続することの難しさを感じています。発足したときには、「これをしよう!」とテンションが高く集まっても、1年間経つと顔が見えなくなる人もいます。人それぞれライフステージがあり忙しさもあるので、もちろん仕方の無いことです。でも、少しの寂しさはあります。とはいえ、新たに参画する方もいるので、組織の新陳代謝をしながら続けていくことが大事なのだと最近では思うようになりました。
熱量にばらつきがある場合には、講座で学んだファシリテーションのスキルを活かしながら声を引き出すことや、続けやすい仕組みを構築することなど、これからも行っていくべきことはたくさんあります。プロジェクトが自走するためには、事務局である私が関わりすぎない方がよいかもしれないと思うこともあり、その按配に苦心していますが、これからも挑戦し続けたいと思っています。まずは、従来通り人の行き来ができるようになった状態で、たくさんの人に来てもらえるようなプロジェクトに育てていきたいと思っています。

地域を知り回遊する謎解きを企画「ナゾツク」のプロジェクト

―― 「ナゾツク」とはどのようなプロジェクトでしょうか?

畳指)謎解きを通じて地域の魅力を遊んで学ぶことを目的にしています。私が前職で謎解きを作っていたので、そのノウハウを「外からあまり人が来ない」「町の中のことが知られていない」という藤崎町の課題への対策に使えないかと考えたのです。「謎解きで人を地域に回遊させ、楽しみながら藤崎町のこと知ってもらいたい」とプレゼンテーションし、賛同したメンバーが集まってくれました。現在は、11人のメンバーとプロジェクトを進めています。

―― 実際にどのような取り組みを行いましたか?

畳指)私たちがつくった謎解きゲームは、謎解きゲームと宝探しゲームの両方を楽しめるゲームになっています。藤崎町の「ふじさき食彩テラス」というお店で謎解きに参加する冊子を購入して、冊子の謎を解くと、藤崎町のあるエリアへ移動する指示がでて、その指示された場所で掲示物を探すと、新たな謎や指示がでてくる。それを繰り返して、宝箱が置いてある最後のポイントでキーワードを報告するとゲームクリアです。
1年目は、「フジサキコース」と「トキワコース」の2コースを作成。ルートは、まちの方達と「この場所いいよね」「ここはぜひ見て欲しいね」や「これは食べて欲しいね」といったことについて、謎をつくるワークショップや対話を行ってつくりました。2年目は、「赤い果実の時間旅行」というりんごに特化した物語を創りました。つくった謎解きゲームは、実際に参加された方の声から「町にこんな所があったんだね」と喜んでもらうことができて楽しめるものになったと感じています。

―― 取り組んでみて、どのような手応えを感じましたか?

畳指)謎解きは頭を使うので、クリアすると「ハー、疲れた!」とクタクタになっている人が多いんです。それを見ると、運営側としては「楽しかったのかな?」とドキドキすることがありました。しかし、参加後のアンケートに「とても楽しかった!」「この謎が好き!」という感想が寄せられ、リピーターになってくださる方もいて、楽しんでくれているんだなと実感することができました。
また、「参加者の方に楽しんでもらいたい」という一心で企画をしていたのですが、実行チームで「地域のどのスポットが楽しめそうか」を考えたり謎を作るために改めて藤崎町のことを調べたりする中で、自分達のまちのことを再発見できたんです。謎解きを作る側も地域を学べる方法だな、と実感しました。

―― 共創プロジェクトである良さを感じた瞬間はありましたか?

畳指)コロナ禍になってzoomによるオンラインになったことで、「話せる人」と「話すことが苦手な人」との差がより顕著になってしまったように感じました。そこで重要だったのは、講座で学んだファシリテーションのスキルでした。声の大きな人の話や考えで、一方通行にならないように、合意形成のステップを踏んでいくよう配慮することができました。

―― これからどのようにプロジェクトを進めていこうと考えていますか?

畳指)現在、新しいプログラムを作成中です。毎年同じようなプログラムを作ることもできますが、チームで話し合い、「昨年しなかった新たなチャレンジをしよう」と動き出すことができました。この挑戦の中で、きっとまた新しい発見があるはずです。
謎解きは青森県内ではそこまで高い認知はなく、県外の方々からの方が人気があります。コロナ禍で思ったような集客ができなかったので、今後は県外からも多くの人に足を運んでいただき、その姿を見て県内の人にも「謎解きはおもしろいんだ!」と知ってもらう相乗効果を生んでいきたいと思っています。

あそべるりんごえんを作る! 「わんどおらんど」プロジェクト

―― 「わんどおらんど」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか?

吉田)「わんどおらんど」は「あそべるりんごえん」を作り、観光客を誘客するというプロジェクトです。私はりんご農園を営んでいて、以前藤崎町の農作物をPRしようと首都圏に出ていったことがありました。しかし、交通費や宿泊費がかかり明らかにコストパフォーマンスが悪い。そこで、青森県に来てもらうことで、あるいは青森県に来ている方々に藤崎町に留まってもらう仕組みを作ることの方が重要ではないかと考えるようになりました。
また、農園をしていると手が回らずにどんどん空き農地が増えていくという問題もありました。そのスペースをうまく活用し、留まってもらう仕組みができないかと考えました。そもそも藤崎町には宿泊施設が乏しく、県内の観光施設の通過点になっているという課題があります。近年ではキャンプブームも到来しているので、「りんご農園に宿泊できる」や「りんご農園を秘密基地にできる」という企画を立てて、プレゼンテーションを行いました。

―― 実際に取り組んでみて、どのような手応えがありましたか?

吉田)コロナ禍となってしまったので宿泊場所として使っていただく機会は少なかったんです。ただ、「りんご園で水鉄砲遊び」「ピザ窯づくり体験」「アップルパイ&生搾りりんごジュース作り」などを実施することができました。
県内の人であっても、りんご園に入ったことがある人はそう多くはありません。そのため、遊びにきてくださった方が「実際に入ったことがなかったので、りんごの木はこんなふうになっているんだという発見がありました!」といったコメントをくださり、少しずつですが認知につながっていると感じることができました。これからはもっと多角的に見てもらおうと、農園の上からも見られるように手製の物見櫓を作りました。

―― 共創プロジェクトであるよさを感じた瞬間はありましたか?

吉田)私たちは津軽弁で「やってみたいをやってまれ」をキャッチコピーにしていたんです。これは、「やってみたいものをやってみようぜ」という意味。スタートの段階なので、合意形成というよりは、思いついたことをどんどん行動に移していく年でした。チームみんなでコンテンツ作りをし、ワイワイ楽しみながら実行しました。


―― これからどのようにプロジェクトを進めていこうと考えていますか?

吉田)自主的にプロジェクトを動かしていく感覚は掴むことができたので、今年度は実際に誘客につなげて実績を出していきたいです。プロトタイピングで見えたよいものはきちんと残し、やりきれなかった取り組みを実行していきたいと考えています。

 

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