メンバーズコラム MEMBER’S
COLUMN

フューチャーセッションズのメンバーによる気づきや想いなどを発信しています。

筧 大日朗

2020.08.28

変化を阻む「3つの問題」と解決する「3つの技術」

どんどん複雑化している社会課題・企業課題を解決していくために、1+1が2を大きく超えるような共創能力が求められるプロジェクトワークが増えていっているように思います。

2020年3月に弊社で実施した日本の株式会社の正社員1万人へのインターネット調査によると、3割以上が何かしらのプロジェクトワークを経験し、中でも「働き方改革/業務改善に関連するプロジェクト」、「新規事業開発などのイノベーション推進プロジェクト」、「自組織の意識改革や制度改革に関するプロジェクト」といった組織変革に関わる組織横断プロジェクトワークの経験者は1割程度いることがわかりました。

組織変革に関わるプロジェクトの特徴の一つは、関係する人々の思いや認識が複雑に絡み合うため最適解が一つではない、ということにあると思います。このような状況下のプロジェクトの成功確率を高めるにはどういった行動が必要になってくるのでしょうか。

変化を阻む、人と人との間に生まれる3つの問題

これまで弊社が多数支援してきた事業開発・組織開発などの組織横断プロジェクトの知見を分析をしていったところ、組織の変化を阻む問題は大きく3つあるのではないかということが見えてきました。

1. 慣行軌道の問題:未来の機会・危機感に気づかない

何か変化を起こした時、その変化量が大きいほどイノベーションといわれることが多いと思います。イノベーションとは新結合であるとか、新しくて実現可能で議論を呼ぶものであるとか言われますが、この概念を生み出した経済学者のヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションを「慣行軌道の変更による重心の移動」と述べています。

現状のまま、つまりは慣行軌道のままではまずいかもしれないと気づくからこそ、変化を起こした方が良いのかもしれないと考えはじめられます。未来に起こりうる・起こしうる機会や危機感を察知するには未来を想像する必要があります。また、想像した未来に向けた変化への共感を広げるためには、気づきを他者にも伝えていくことも必要となりそうです。

2. 意思決定の問題:各論で利害・損得が一致しない

変化の必要性に気づき、周りの共感を得て何かしらの企画を立案し実践する。例えば、働き方改革や新規事業開発が必要であるといった部分の大枠の合意は、ある程度は得やすいでしょう。また、働き方改革でリモートワーク環境を構築しようといった部分の合意も得やすいかもしれません。

しかし、リモートワーク環境としてこういったツールを導入するので予算がこれくらい必要だとか、解像度が上がってきて細部が見えはじめてくると、より具体的にイメージしやすくなって利害や損得が明確になるために、賛成だけでなく反対意見も出やすくなってきます。そのため、さまざまなアイデアを探索し、関係者との対話を繰り返しながら合意形成を進め、意思決定につなげることが必要になりそうです。

3. 行動変容の問題:意欲が継続できず、実践が持続しない

変革のための企画を具現化するためには痛みを伴うこともあります。また、実行段階になって変えることへの不安が出てくるのは人としてむしろ自然な反応です。変化には往々にして時間がかかるものなので、興味対象が変わって当初の意欲を継続できなくなってしまうこともあります。

変化への不安を減らし、意欲も維持できるような働きかけと共に、プロジェクトチームとしての実践と振り返りによる改善、試行錯誤を日常化できるような環境の構築ができないと、目指していた変化、つまりは慣行軌道の打破を達成することはできないかもしれません。

関係性を変え、創造知を生み出す3つの技術

このような問題を打破する共創やコラボレーションに関する技術にはどんなものがあるのでしょうか?

これについても分析から3つの技術があるのではないかという仮説を抽出できました。

  1. 紐帯促進(Stakeholder Engagement)
    最適な関係者を選定し、その人たちとの関係性を向上させる
  2. 知識創造(Knowledge Creation)
    集合知を創造知に変え、想定外の発見と行動を生み出す
  3. 影響評価(Impact Visualization)
    現状の成果を可視化し、客観的に評価し改善につなげる

このような3つの技術を活用した行動をとることでプロジェクトの成功確率は高まるのか、前述した正社員1万人アンケートの中から、直近3年以内に組織変革プロジェクトを経験した人たち(515名)に対し行動調査したところ、3つの技術を活用した行動が一貫して多い人は、それ以外の偏りがある人たちよりも、目的やゴールをより明確にし、十分な社内予算も獲得でき、期待以上の成果を出すという傾向が明確で、プロジェクトの成功率が2割以上高くなるということが検証できました。

組織の変化を阻む人と人の間に生まれる3つの問題(慣行軌道/意思決定/行動変容)を解決するための、関係性を変えて創造知を生み出す3つのコミュニケーション技術(紐帯促進/知識創造/影響評価)で表現される9つの行動領域を、弊社では「コネクト・テクノロジー」として総称しています。また、9つの行動領域が一貫して高い人を「コネクト・テクノロジスト」と名付けています。

9つの行動領域は具体的にどのような行動なのか、次回以降お伝えしていきたいと思います。

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